母の命日が近くなってきました。母が他界した日は、桜が満開でした。

桜は大好きな花でしたが、母が他界した時から、私にとっては悲しい花になってしまいました。もう随分と時間が経っているのに、悲しみは癒えることはありません。ですから、桜はなるべく見ないように過ごしてきました。

でも、レイを授かってから、母を思い出した時、悲しみの中に新たな思いを感じるようになりました。レイを抱きしめている時、私の母もこんな気持ちで、こんな風に私を抱きしめてくれていたのかなと思うことがあります。そんな時、私は自分の中に、私を育ててくれた温かい母を感じています。

数日前、母の遺影を飾っている棚の掃除をしていた時、レイが母の遺影の前で、きゃっきゃと笑い声をあげて、抱っこしてポーズをしていました。この時、私は忘れていた、一つの母の記憶を鮮明に思い出しました。母は若くして他界したので、私がパパと出会って結婚し、子供に恵まれたことは知りません。母が亡くなる数日前に、「あなたが子供を産んだ夢をみたのよ。あなたに抱かれて、きゃっきゃと笑って、かわいい男の子だったのよ」と、いつになく元気な笑顔で話していたことを思い出しました。何故かとても大切なことを思い出したような気持ちになりました。と言うより、むしろ、なんでこんな大切なこと忘れていたのだろうという感じでした。

思わず掃除の手を休めて、レイを抱いて二人で母の遺影を見ていました。

「ママ、見てる?」と心の中で、亡き母に問いかけました。あの日あの時、母は夢の中で時間旅行をして、今この時の私とレイを見ていたのかもしれないと、そんな非現実的な思いが脳裏をかすめました。いいえ、どこかで見たドラマのように、そうであって欲しいと願ったのかもしれません。

写真の中の母は、いつものとおり、黙って優しく微笑んでいました。

今年はパパとレイと3人で、桜の花を見に行こうと思います。